2014年11号 通販110番 「個人情報の悪用が心配・・・」

個人情報の保護に敏感な消費者が増えています。今回は個人情報に関する相談事例から、消費者の心理的不安と、それに向き合う事業者の対応について考えたいと思います。

 

■相談事例①
個人情報を削除してほしいと依頼したのに断られた

保険サービスの勧誘電話があった。会社名を確認すると、最近、数回にわたり下着を購入した通販会社だった。今後取引の予定はなく、情報の漏えいが心配なため、個人情報の削除依頼をしたところ、「アフターサービスの観点から削除はできない」「リコール対応等の場合必要になる」との理由で断られた。家電製品等なら理解できるが、自分が買ったのは下着である。万一この商品のことで問題が起こっても、自分は会社に責任を求めないので構わない、と話したが「削除はできない」の一点張りだった。会社からは削除の代替として利用停止の提案があり、それは承諾した。しかし将来100%情報漏えいがないとは言い切れないのだから、自分の情報は削除してほしい。(会員)

■処理内容①
適切な方法で入手した個人情報は、必ずしも削除する必要はない

まず、適切な方法で入手した個人情報の削除は義務ではないことを説明した(※)。JADMAでも、会員社に対し、安全管理措置が徹底されていることを前提に、リコール対応などの可能性も考慮して、削除は必ずしも必要ではないとアドバイスしており、最終的に削除するか否かは各社のルールによる。ケースによっては削除に応じている会社もある。
当該社はJADMA会員社であり、JADMAが定める「通信販売における個人情報保護ガイドライン」に基づき適切に管理していると認識している。情報漏えいの不安があるようだが、信頼していただきたいと説明することで理解が得られた。
「通信販売における個人情報保護ガイドライン」第23条(保有個人データの利用停止等)参照

 

■相談事例②
個人情報の利用停止依頼済なのに関連会社からDMが届く

定期的に通販カタログやDMが届く会社に、これらの送付物を止めて欲しいとの依頼をした。既に発送手配中のものもあるため、実際の停止までには1カ月位かかるとの説明があった。
しかし、依頼から2カ月も経つのに、またDMが届いた。これまでのDMとは販売商品が異なるが、会社名から当該社の関連会社と思われる。なぜ、一斉に利用停止してもらえないのだろうか。(会員)

■処理内容②
事業者に、個人情報を共同利用している関連会社すべての利用停止を依頼

会社に相談者の個人情報利用停止処理がされているかを確認したところ、既に処理済みとのことだった。そこで、関連会社からDMが届いた件を伝えると、「個人情報の共同利用をしている関連会社の利用停止はしていない。すべての送付物を止めて欲しいとの依頼があれば対応する」との回答だった。
消費者は、自分が取引した会社にDM発送の停止依頼をすれば、自動的に関連会社すべての送付物が止まると考えるのが当然である。そうでないならば「共同利用している関連会社すべての利用停止をしますか?」と会社側から確認してほしい、と依頼したところ、後日「今後は顧客に説明をした上で、丁寧な対応を行いたい」との回答が得られた。
相談者には、当室から再度利用停止の徹底を申し入れたことを伝えたところ、理解が得られた。

 

■通販110番より
消費者は万一の被害を想定し、自衛方法を考えておくこと
事業者は消費者心理に配慮し、問い合わせには丁寧な説明を

個人情報について、「悪用されないか “何となく”心配」と感じる人は少なくないようです。
しかし、実際に悪用されたという相談はほとんどありません。むやみに不安になることよりも、万一漏えいしてしまった場合にどのような被害が考えられるのか、そのためにどのような自衛をすべきかを考えておくことが重要であると説明するようにしています(購入後のカード利用明細の確認、ネット通販利用の場合は、ウイルス対策ソフトの更新、パスワードの定期的な変更等)。そうすることで、「漠然とした不安」はぬぐえるのではないかと思います。
個人情報を扱う事業者は、こうした消費者心理に配慮し、お客様から個人情報に関する問い合わせがあった際には丁寧に説明していただきたいと思います。例えば、会社のルールとして一定期間個人情報を削除できないのであれば、どのような理由から削除が難しいのか、また、お客様の要望に応えるためには利用停止で済むのか等、可能な範囲での説明が必要でしょう。
個人情報を扱う会社は通販だけではありません。利用目的や、利用目的の達成に必要な範囲が明確でない事業者に対しては、安易な個人情報の提供を避けるのは当然です。一方で、一定のリスクがあることを認識しつつ、必要以上に過敏にならないことが重要と考えます。

通販110番相談員 池田 早苗

 

 

 

 

>>JADMA NEWS 掲載情報 目次に戻る場合はこちら

>>JADMAのホームページはこちら